オペラ「てかがみ」


オペラ「てかがみ」は21世紀の幕開けを祝い若い人たちへのメッセージを込めて作られました。
小さな手鏡が様々な人々の愛の力により、55年の歳月を経て戦時中の日本からアメリカへ、そして21世紀を迎えた現代の日本にまた戻ってくるというお話。私たち日本人にとって決して忘れてはならない70数年前の戦争の体験、広島と長崎の原子爆弾を初めとする本土空襲の怖しさなども劇中に織り込まれています。
平成27年度の文化庁巡回公演事業の初採択から10年目となる今年までですでに100校を超える学校で公演を続けて来ました。

あらすじ

●西暦2000年(平成12年)の新潟市

小学校教諭の亮子と高校教諭ジョンの結婚披露宴。亮子の教え子達も駆けつけ、祝いの歌を歌い始めたその時、結婚式場に火災が発生してしまいます。
この火災で亮子の父親の武田勇一は少年時代に空襲による火災で亡くした母親カヨの幻影を見るところから物語は始まります。

●西暦1945年(昭和20年)新潟港

母カヨに連れられて5歳の勇一は新潟港に来ています。その時、父親が乗る掃海船が触雷して沈没してしまいます。動転するカヨをアメリカ人捕虜の軍医リチャードが介抱しますが5歳の勇一に「鬼畜米英!どうして機雷を落とした!」と詰め寄られます。
やがて新潟市にも疎開命令が出され、夫を失ったカヨと勇一は、長岡の実家に疎開するのですが、カヨは港で自分を介抱してくれたお礼に軍医のリチャードに手鏡を渡してくれるよう、夫の親友の杉本監督に託します。カヨに恋慕の情を抱く杉本は、苦悩しながらもリチャードに手鏡を渡し、自身もカヨへの慕いを胸に生きていく事を誓います。


披露宴の亮子とジョン

五歳の勇一と母カヨ

レイチェルから勇一に手渡されるてかがみ

長岡空襲の悲惨さを突きつけ、リチャードに詰め寄る杉本監督。そこに空襲の被害から逃き延びた5歳の勇一が現れ、炎の中に母親を見殺しにした事を告白します。杉本は勇一に「忘れろ!その辛さは心の底に沈めてしまい、誰にも言うな…」と抱きしめ、勇一を自分の子供として育てる決意を固めます。
終戦になり、この国の未来を案じ嘆く杉本に、帰国を控えたリチャードは「時は流れ、必ずこの子達がこの国を担う、この時代にあった事を忘れないなら…」と話します。

●2000年(平成12年)校長室

亮子は突然の火災で思い出された父親のつらい戦争体験を聞き、今までそれに気づかず過ごしてきた自分は、でみんなから祝ってもらう資格がない!と披露宴の中止を懇願しますが、勇一が「この時代にあったことを忘れないなら…」というリチャードの言葉を思い出した事からリチャードがジョンの祖父であった事に皆が気づきます。ジョンの母親レイチェルは自分の母(すなわちリチャードの妻)から託された手鏡を亮子に渡します。この手鏡こそが勇一の母カヨがリチャードの婚約者へと託した手鏡だったのです。巡り巡って国と世代を超越してまた日本に戻ってきた「てかがみ」でした。
いつしか披露宴は再開され、参加者全員が二人の結婚と希望に満ちた明日を祝って高かに歌います。いつしかそこには昭和20年の登場人物達の姿も加わり、幻想的に感動のフィナーレを迎えます。


杉本監督とリチャード
☆このストーリーは全国公募し入選した「手作りの心温まる結婚式」、「大海の彼方に」、「松山鏡」の三作品を参考に脚本家平石耕一によって作られました。

登場人物


武田勇一 60歳:バリトン
武田亮子 28歳:ソプラノ
レイチェル・ターナー 54歳:アルト
武田カヨ(昭和20年当時28歳):ソプラノ
リチャード・マクベイン(昭和20年当時27歳):テノール
杉本監督:バリトン
高校の校長:アルト
会場係:バリトン
五歳の勇一
捕虜1、2、3
憲兵
衛兵

合唱:披露宴の客たち、小学生、荷役労働者たち、運送会社の社員たち
演奏:ヴァイオリン、チェロ、フルート、クラリネット、打楽器、ピアノ

作曲:池辺晋一郎
台本:平石耕一



主な登場人物

●武田勇一 60歳
亮子の父親で旅行会社を経営。5歳の時に空襲の火災で母親を置き去りにしてしまった事がトラウマになっている。劇中では5歳の勇一も登場する(セリフのみ)

●武田カヨ (昭和20年当時28歳)
勇一の母親。リチャードから介抱されたお礼にと彼の許婚に「てかがみ」を贈る。夫は機雷掃海の作業中に殉職。息子の勇一と疎開するが、そこで空襲に遇い命を落とす。

●武田亮子 28歳
小学校の教諭。 父の心の苦しみを今まで知らなかった事に大きな後悔の念を持っている。

●杉本監督
運送会社の監督。無愛想で冷徹に見えるが影では捕虜の待遇も気にかけているような男。親友の妻であるカヨに横恋慕している。

●リチャード・マクベイン(昭和20年当時27歳)
捕虜収容所の軍医。正義感が強く、捕虜の待遇改善を求め、杉本監督とはいつも対立している。

●レイチェル・ターナー 54歳
軍医リチャードの娘でジョンの母親。初老のアメリカ人女性。

これまでの公演実績

ミラマーレ・オペラ制作のオペラ「てかがみ」は平成27年度に初採択されて以来、全国の小中学校で公演を続けており、今年で10年目となりました。

令和5年度

10月11日(水) 茨城県 日立市立滑川小学校
10月12日(木) 茨城県 常総市立豊岡小学校
10月13日(金) 埼玉県 久喜市立久喜東小学校
10月16日(月) 茨城県 鹿嶋市立豊郷小学校
10月17日(火) 東京都 八王子市立上壱分方小学校
10月18日(水) 埼玉県 ときがわ町立明覚小学校
10月20日(金) 山梨県 笛吹市立一宮北小学校
12月12日(火) 京都府 京都市立大原野小学校
12月13日(水) 兵庫県 猪名川町立白金小学校

令和4年度

9月8日(木) 熊本県 上天草市立松島中学校
9月9日(金) 熊本県 山鹿市立八幡小学校
9月12日(月) 長崎県 西海市立西海中学校
9月14日(水) 福岡県 大任町立大任中学校
9月16日(金) 佐賀県 鹿島市立鹿島小学校(2回公演)
1月11日(水) 神奈川県 横浜市立美しが丘小学校

令和3年度

11月8日(月) 滋賀県 東近江市立湖東第三小学校
11月9日(火) 大阪府 東大阪市立布施中学校
11月10日(水) 大阪府 東大阪市立布施中学校
11月11日(木) 三重県 鈴鹿市立天栄中学校
11月12日(金) 三重県 鈴鹿市立天栄中学校
11月15日(月) 大阪府 堺市立浜寺東小学校
11月15日(月) 大阪府 堺市立浜寺東小学校
11月18日(木) 大阪府 大阪市立鷹合小学校

令和2年度

10月6日(火) 京都府 京都市立嵐山東小学校
10月13日(火) 京都府 福知山市立上川口小学校
10月16日(金) 新潟県 上越市立中郷中学校
10月19日(月) 石川県 珠洲市立宝立小中学校
2月24日(水) 新潟県 糸魚川市立西海小学校/能生南小学校
2月25日(木) 新潟県 糸魚川市立青海小学校(午前)同市立田澤小学校(午後)

平成30年度

9月18日(火) 長崎県 小値賀町小値賀中学校
9月20日(木) 長崎県 西海市立ときわ台小学校
9月21日(金) 長崎県 佐世保市立江迎中学校
10月9日(火) 福岡県 小竹町立小竹北小学校
10月10日(水) 北九州市 北九州市立泉台小学校
10月11日(木) 福岡県 小郡市立御原小学校
10月12日(金) 福岡県 朝倉市立馬田小学校
10月15日(月) 佐賀県 嬉野市立塩田中学校
10月16日(火) 佐賀県 白石町立福富中学校
10月17日(水) 福岡市 福岡市立福重小学校
11月16日(金) 長崎県 壱岐市立石田中学校
11月19日(月) 熊本県 熊本市立下益城城南中学校
11月20日(月) 熊本県 水俣市立袋中学校
11月22日(木) 熊本県 産山村立産山小学校

平成29年度

9月29日(金) 岩手県 久慈市立侍浜中学校
9月30日(土) 岩手県 久慈市立夏井中学校
10月2日(月) 秋田県 鹿角市立尾去沢中学校
10月3日(火) 秋田県 鹿角市立花輪第一中学校
10月4日(水) 秋田県 鹿角市立八幡平中学校
10月16日(月) 北海道 留萌市立港南中学校
10月17日(火) 北海道 江別市立江別第三中学校
10月18日(水) 北海道 札幌市立手稲東小学校
10月23日(月) 岩手県 北上市立照岡小学校
10月24日(火) 宮城県 気仙沼市立条南中学校
10月25日(水) 宮城県 気仙沼市立階上中学校
10月26日(木) 宮城県 村田町立村田第二中学校

平成28年度

7月11日(月) 愛媛県 宇和島市立番城小学校
7月12日(火) 高知県 本山町立嶺北中学校
7月13日(水) 高知県 高知市立潮江南小学校
9月5日(月) 香川県 三豊市立吉津小学校
9月6日(火) 香川県 丸亀市立富熊小学校
9月7日(水) 香川県 東かがわ市立引田中学校
9月8日(木) 徳島県 石井町高浦中学校
9月27日(火) 兵庫県 加東市立滝野中学校
9月28日(水) 兵庫県 篠山市立篠山東中学校
9月29日(木) 兵庫県 芦屋市立山手中学校

平成27年度

10月6日(水) 滋賀県 滋賀大学教育学部付属小学校
10月7日(木) 奈良県 斑鳩町立斑鳩南中学校
10月8日(金) 奈良県 奈良県立青翔中学校
10月12日(火) 和歌山県 海南市立東海南中学校
10月13日(水) 和歌山県 紀の川町立打田中学校
10月14日(木) 和歌山県 紀美野町立美里中学校
10月15日(金) 和歌山県 有田市立初島中学校
10月18日(月) 大阪市 大阪市立西中学校

みんなの感想

実施校からミラマーレにお寄せいただいた感想の一部をご紹介いたします。

review01

潮江南小生徒さんより「オペラには意味がある」
2016年7月13日に潮江南小学校へオペラ歌手の人達が来てくれました。私達6年も一緒に参加してオペラ「てかがみ」をやりました。
舞台の裏ではオペラ歌手の皆様はとっても優しくて素敵な笑顔で私たちの緊張をほぐしてくれました。オペラ歌手の方は私達に「がんばってね!」と笑顔で言い残して舞台へ行きました。その姿を見てかっこいいなと思いました。
心に残った場面はアメリカの軍人さんが勇一に責められている場面です。
「これがこの時代の戦争だ。」という言葉から「この戦争はどうすることもできない」と言うことが伝わってきて、敵国同士お互いに苦しんでいるとわかりました。それに敵国のアメリカの軍人さんを、勇一のお母さんは愛の心を持って受け入れていたことで人間の愛の大切さを改めて知ることができました。
このオペラのメッセージには、広島や長崎以外の都市でも悲惨で苦しい出来事があった事をや日本全国から見れば本当に小さな出来事でも、一人一人の気持ちを自分の心でしっかり考えて次の世代に伝えていって欲しいという事ではないかと思いました。

misato01

紀美野町立美里中学校校長先生より
平成27年度文化庁文化芸術による子供育成事業では、ミラマーレの皆様にオペラ「てかがみ」を本校で実施して下さり、誠にありがとうございました。
和歌山県の山間部にある小規模校ゆえ、間近に本物の舞台芸術に触れたことがい生徒達にとっては、大変感動する出来事でした。舞台装置、中でも体育館が劇場に変わっていたことに驚き、そして鍛えられた体育館一杯に響く迫力ある歌声に圧倒され、感動しながら観劇できました。本町にオペラがやってくることは50年に一度あるかないかのことで、地域の皆様や保護者からも感謝されました。中でも生徒達の緊張をほぐす声かけをしながら演技され、本公演を成功させ、生徒達に成功体験を持たせてくださったことに大変感謝いたします。今後もますますのご発展を祈念しております。

misato_m1

美里中学校 1年Mさん
今日は、ミラマーレ・オペラ「てかがみ」を見せてもらいありがとうございました。初めてオペラをみましたが、話がとてもおもしろくて感動しました。みなさんがとても歌が上手だったけれど表現力もすごいと思いました。様々な表情を場面ごとに変えていたので、先が読めなくてとてもドキドキしました...

misato_o1

美里中学校 1年Oさん
今日は、遠くから美里中学校に来てくださってありがとうございました。オペラを観るのは初めてなので、とても楽しみでした。練習の時、おどりのふりつけや歌を分かりやすくていねいに教えてくれたので、本番楽しく歌えることができました。オペラ「てかがみ」を観て、すごく迫力があって最初はとてもびっくりしました。特に俳優さんたちの歌がとても声が大きくてとても感動しました...

misato_n2

美里中学校 2年Nさん
ミラマーレ・オペラで僕は初めて直接見ることができました。ありがとうございました。僕はオペラを見て想像以上の声でとてもすごい迫力を感じました。言葉を全部歌にして演じるのはとても難しい事だと思います。歌詞や演技を覚えるだけでもすごいのに、表情などもとても豊かに表されていました。演奏している人達も、一つのオペラが終わるまでずっと演奏していてすごい...

misato_y3

美里中学校 3年Yさん
今日は、美里中学校に来てくださってありがとうございました。私はオペラを初めて見ました。見せてもらったオペラは想像していたオペラよりすごかったです。一人一人が役になりきって歌いながら演じるということはとても難しいと思いました。そして私はこのオペラに参加させてもらいました。初めは、私でもできるのか不安だったけれどみいなさんが優しくていねいに一つ一つ教えてくれたおかげで成功しました...

review02

潮江南小生徒さんより「オペラ」
映像やテレビで見るより本物の迫力が本当にすごかった
内面が優しい人でも、他の人にきびしくしてしまうのは、やっぱり戦争が人の性格を悪い方に変えてしまうんだなぁーって思った。「私の心に機雷を落としていきました」ていう言葉があって、ただ解りやすくやるだけじゃなく、こんな意味が深い言葉がいいなーと思った」
このオペラは、人の優しさやつながりの大切さを伝えたくて作ってくれたのかなと思った。

review01

潮江南小生徒さんより「ミラマーレオペラ」
7月13日潮江南小体育館で私たち6年生はプロのペラ歌手の人たちとオペラをしました。リハーサルでは説明にしっかり耳をかたむけました。疎開は親とも離れなければいけない子供にとってはとても辛いことなので、「もう誰とも離れたくない!」という子供の気持ちを、表現しようと頑張りました。そして本番。私はドキドキしていました。でも友達が「よし!〇〇ガンバロ!」と言ってくれたので、すごく気持ちがやわらいで、とてもやる気も出てきました。疎開の場面は少し下を向いて暗いかんじを出しました。友達は音が少しずれていても大きな声でからだを大きくゆらしていたりして、一生けん命頑張っていることが伝わってきました。フィナーレを歌い、最後の頃には私もオペラ歌手になったような気持ちになれました。

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